2007.08.04
この地は美しい [アフガン・ノスタルジア]
戦乱の果てに輝く笑顔
マザリシャリフにて, Sep 2004 Afganistan
物陰からこちらをうかがう視線。手を振るとキャーっと走り去ったかと思うとまたこっちを見ている。その視線には素朴な好奇心が溢れていた。
アフガニスタン北部、マザリシャリフ。街の中心に美しいマリー廟が鎮座する。このモスクには子どもから老人まで多くの物乞いがいたが、他の国で見る彼らとは違っていた。老人は気品すら感じるほど凛として、子どもは好奇心の赴くままに明るい。
アフガニスタンを訪れてから毎日が重い緊張に包まれていた。目の前を走り去る装甲車に身を硬直させ、片足をなくした老人を見かけると目のやり場に困り、崩れた廃墟の物陰が気になった。そんなときに出会った底抜けに明るい物乞いの少女たちの笑顔が、乾いたからだにしみわたる水のように優しく感じられた。
残念だが今、アフガンを旅するのは常に危険がつきまとう。一見平穏でも、現政権の法と秩序は都市部を離れると皆無に等しく、多くの部族が群雄割拠している。長い内戦で民族間の溝は深く、それが復興への大きな壁になっていると感じられた。
しかし、そんな状況にあっても人々の目には”生”への力がみなぎっている。旅の途、緊張の何倍もの感動を味わえた要因は、彼らの笑顔だ。
この地は美しい。風景もそこで生きる人々も。