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よもやま話 [サディスティック・ネパール]

サイコーに色っぽいな!

サイコーに色っぽいな!

カラパタール(5545m)より臨む, Dec 2003 Nepal


「山歩きの何が楽しいのですか?ねぇ、何がたのしーの?」と尋ねられてもいささか返答に困ってしまう。自分でも一体何が楽しいのか分からないのだ。いや、この際、正直に言ってしまうと、山歩きなんてものは楽しくも何ともない。ただ斜め前方70センチ付近の地面を見つめながらひたすら登ったり降りたりする日々というのはむしろうすらさびしい気さえする。

では、多くの人々を魅了する山歩きの魅力とはいったい何だろうか?

ここから話は人類の精神世界を哲学的に分析した結果とは全く関係なく展開していくのである。

まず、高いところというのは、バカにもそうじゃないという人にも、人間の本能をスルドクえぐる人類発祥的不思議な魔力があると思われる。事実、僕は5000メートルと聴くとなぜだか心の中で「ムフフッ」と笑ってしまう。その「ムフフッ」が何を意味するかは不明だが、とにかく「ムフフッ」なのである。

次に思い当たることといえば、大自然の優美。青い空、澄んだ空気、デカイ大地のデカイ起伏。そこに美味い酒などがあれば、それはもうとにかく「サイコー」ということになるのではないか。

また、これは少数派かもしれないが、マゾヒスティックな魅力というのもあるのかもしれない。ザックのベルトが肩に食い込む、足の肉刺がつぶれる、暑い、冷たい。「あっ、イイ。もっと、もっと」などと快感をおぼえる人がいてもおかしくない世の中である。

しかし、どれをとっても山歩きの楽しさを決定付けるものではないような気がする。山歩きとは、つまり山を歩くことである。事実、圧倒的に山を歩いている時間が長い。そこに楽しさを見出してこそ山歩きの魅力を語れるのではないかと思うのだ。

とは言ったものの文頭で「山歩きなんか楽しくない」と言ってしまった手前、ここからの話の展開が難しい。しかし、僕はスバヤク『歩く』という行動から目をそらし、歩いている長い時間の間に何を考えているかという人間の思考回路にスポットを当てて、左斜め前方のワキ道に話を進めていくのである。

「山歩きをしている時はただ一つ、己が定めたある地点に到達することだけを考え、無心坦懐に歩くだけなのさ。それが山のロマンってもんだろう?」
というのは全くのウソである。歩いているときというのは、むしろ常に何か考えている。片肘をつき、その上に顎を乗っけて、ジッと虚空を睨みつけている人だけが「考えるヒト」なのではなく、山歩きをしている人だって立派な「考えるヒト」なのである。

ただ、双方の決定的な違いは、頭の中に思い描くことに『人生』という言葉があるかどうかである。座ってジッと物思いに考え込んでいる人にはやはり『人生』という言葉がよく似合う。

一方、山歩きをしている時に考えることと言えば、山賊に遭った際の正しい対処法8ヶ条とか、山に登るとどうしてこうもオナラがたくさんでるのだろうかとか、このままではいずれ山の空気は全部オナラになってしまうのではないだろうか、そうしたら大変だけどちょっとオモシロイな、などと、そこには『人生』という言葉のカケラすらも見当たらない限りなく非生産的不毛思考なのである。そして、それらの不毛思考はどこからともなくフラリとやって来て、夕日のガンマンのように名前も告げずに去っていくのである。

しかし、その不毛思考の中に、脳裏に焼き付いて離れないものが一つだけある。それは歌である。他の不毛思考と同様、この歌もある時どこからともなく湧き出してくるのだが、どーゆーわけか一向に去る気配を見せず、そのまま前頭葉あたりをグルグルとかけ回っているのだ。これはすべからくその旅のテーマソングとなる。

この旅のテーマソング、意外にもその旅の善し悪しを左右する重要なものである。例えば、それがボブ・ディランの「風に吹かれて」であれば、世も捨て、恋も捨て、ひたすら山に人生をかけた非純情硬派男といった、男なら誰もが一度は憧れるハードボイルド風な山旅になるに違いない。また、田中星二の「ビューティフル・サンデー」だと、のどかな春の昼下がり、といったどちらかというとピクニック気分になってしまうが、限りなく明るく楽しい一家団欒的山歩きとなるだろう。しかし、これが坂東英二の「燃えよドラゴンズ」なんかになると、すべからくその山旅は台無し、もしくは最悪の場合、志半ばにして下山を余儀なくされることにもなりかねない。

さて、それでは僕の今回の山歩きにおけるテーマソングは何だったか。ちょっと小っぱずかしいが、それは昔懐かしC-C-Bの「ロマンティックが止まらない」だった。言っておくが、僕はこの歌を好き好んでーマソングに選んだわけではない。突然、どこからともなくやって来て僕の脳裏に住み着いてしまったのだ。C-C-B自体は鮮烈なデビューの後、跡形もなくこの世から姿を消してしまったが、彼らの歌は今回の山歩き中、僕の脳裏から全く消え去る気配を見せなかった。道中、何度か津軽海峡冬景色―トンネルの向こうは雪だった―に変えようと試みたが、しばらく歩いているうちにいつのまにか頭の中では、
だ・れ・か ロマンティック
と・め・て ロマンティック
む~ねが~ む~ねが~
く~るし~く~なる~
となっているのである。僕の方がよっぽど誰かにこの歌を止めてほしかった。しかし、標高が上がり、辺りの酸素が薄くなってくると、あながち大ハズレでもないような気がた。そして僕は何とかそのまま山歩きを続けることができた。

ここまで書き終えたところで、ふと肝心な山歩きの魅力とは一体何であるか、ということを言っていないことに気付いてしまったが、もう気付くのが遅すぎるので、無理矢理ここで話を終わらせてしまうことにする。それではご機嫌よう。バイバイ。

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Comment 10

mincer

山は制覇したところまでは楽しいんだけど、
帰りに膝がガクブルになるのがなんだかなぁなのですww

今度は自転車旅行についても考察頂きたいものです
少し前、iPodに無作為にU-SENで録った曲を友に旅をして、
ハードな峠で負けそうになった時、ZARDの「負けないで」
がかかるという出来すぎたシチュエーションに、
思いっきり萎えたことを思い出しましたww
by mincer (2007-07-01 05:48) 

突然鳴り止まなくなるルーピングには、
平常の暮らしでも悩まされることもありますが、
高度5000mでのそれについては想像が困難です。
しかしC-C-Bについては脳内無限ループ出現率は
平常時においても極限下であっても、一様に高いのではないかと、
容易に想像できます。
by (2007-07-01 07:55) 

うらなみっこ

そんな過酷な状況に置かれた時に
自分の頭に歌が流れるかどうかはわかりませんが、
普段の生活の中で、ここに書いても誰もわからないような
ローカルなCMソングが止まらなくなったときは
悔しいようなうっとうしいような、
でもクスリとひとりで笑ってしまうような複雑な心境になります。。

しかしホントに色っぽい写真ですな♡
by うらなみっこ (2007-07-01 09:06) 

gaucho

あるある。変な曲が出現すると歩調に悪影響を与えて
疲れ2割増になったりもする。
by gaucho (2007-07-01 12:06) 

ときどきドンキのテーマ曲が私を悩ませるときがあります。

「ロマンティック~」はイントロの
「パッパッパッパッパラッパパッパーパパー」
の辺りがぐるぐるしますねぇ。♪とーもーだーちの~ぉ♪
by (2007-07-01 18:25) 

Erin B

C-C-Bってなんかの略でしたっけ?
うーーー、思い出せない。。。(~_~;)
by Erin B (2007-07-01 18:45) 

ワタシは中島みゆきがよく流れます。
by (2007-07-05 00:51) 

アズサ

C-C-Bの曲は、私も仕事中によく頭の中でグルングルンしてました。
思わず携帯にダウンロードして、職場で熱唱したこともあります。
罪な奴です、C-C-B♡
by アズサ (2007-07-05 17:41) 

○ご無沙汰しています。頭のなかでC-C-Bが流れはじめました~!
by (2007-07-05 22:49) 

薔薇少女

スタンプラリーでお邪魔しました。
ロマンチィック♪私も今唄い出しちゃいました・・・♪♪♪
by 薔薇少女 (2007-10-03 11:03) 

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